産業医のおはなし④救急箱の中身には何を入れたらいい?

こんにちは。
お盆も終わり日常生活に戻られた方も多いのではないでしょうか。
心身がお仕事モードになっていない方も多いと思いますので、軽い作業から徐々に慣らしていけるといいですね。

さて、数年前に【職場の労働安全基準】が変わったことをご存じでしょうか。
多様な方が働きやすいよう、昭和47年施行の規則を見直したものになります。
具体的には照度をより高い基準に変更していたり、常時 50 人以上又は常時女性 30 人以上の労働者を使用する事業者で休養室の設置がマストになったりしています。

参考)ご存じですか?職場における労働衛生基準が変わりました

その中で、これまで中身が決まっていた救急箱の中身に関する以下条文が削除されています。

第六百三十四条 事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。
一 ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
 二 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
 三 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等


変更の意図としては、①速やかに医療機関に搬送することが基本であること、②事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なることから一律に備えるべき品目についての規定は削除すること、の2点になります。
応急手当の備品を定める必要がない、というものではありませんので、職場で発生することが想定される労働災害等を衛生委員会等での調査・審議し、産業医の意見も踏まえながら備え付けていきましょう。

各事業所の必要性に応じて備品を追加していくとよいかと思います。下記は1例となります。

応急手当絆創膏、滅菌ガーゼ、テープ、担架、AED
感染予防手袋、マスク、消毒用アルコール、ガウン、ビニール袋、吐瀉物の凝固剤、塩素系消毒剤
あるといいもの体温計

改正前に定められていた火傷薬や止血帯は、現在は使用を推奨されていません。副木は骨折の固定に使用されていましたが、適正な使用が難しく、まずは整形外科医の診察を受けることが第一です。火傷は冷却を基本としており、医師の治療を受ける前に自分で薬剤を塗ることは推奨されていません。また、止血帯による止血方法は一般の方が実施するのは難しく、清潔なガーゼ等で傷口をしっかり押さえる「直接圧迫止血法」が推奨されています。

参考)東京消防庁<てびき・ハンドブック><消防少年団 指導者ハンドブック><第11章 救急>

また、条文には以下の記載もあります。

なお、事業場において労働災害等が発生した際に、速やかに医療機関へ搬送するのか、事業場において手当を行うのかの判断基準、救急用具の備付け場所・使用方法等をまとめた対応要領を事業場においてあらかじめ定めておくことが望ましいこと。

職場で発生する可能性のある労働災害を想定し、発生時の流れを確認してみてください。
その際にはぜひ産業医をご活用いただければと思います。