配達中にクマ被害、これって労災?|経営者が知っておくべき安全配慮の境界線
師走に入り、皆さまお忙しい時間を過ごされていると思いますが、体調はいかがでしょうか。
今年を1年を振り返った際に我々日本人に衝撃を与えたニュースは、クマの出没とその人的被害ではないでしょうか?
今回は、このクマ被害に関連して、産業医の視点から「業務中に遭遇した場合の労災認定」について詳しく解説します。
先日、新聞配達員の方が業務中にクマに襲われるという、大変痛ましいニュースが報じられました。 被害に遭われた方の恐怖と肉体的な苦痛は計り知れません。心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早いご回復をお祈りいたします。
実は、このようなケースは産業医の視点で見ると、企業側が「知らなかった」では済まされないリスクを孕んでいます。
「自然災害だから仕方ない」では済まされない
経営者の方から「クマの出没なんてコントロールできない。それでも会社の責任になるのか?」という声を聞くことがあります。
結論から申し上げますと、今回のようなケースは「労働災害(労災)」と認定される可能性が極めて高いです。
なぜ労災になるのか(業務起因性)
労災認定のポイントは、「仕事が原因でその災害に遭ったか」です。
- 業務命令の影響: その方がその場所・その時間にいたのは、業務命令を遂行するためです。
- 因果関係: 「仕事でなければ、そこにいなかった。だからクマにも襲われなかった」という関係がある以上、これは業務に内在するリスクが現実になったものと判断されます。
経営者への直言
「運が悪かった」で済ませてはいけません。クマの出没自体は防げなくとも、従業員を守るために企業ができることはあります。
- ハザードマップの確認: 危険箇所を把握させ、周知していましたか?
- 装備品の支給: クマ鈴やラジオの携行をルール化していましたか?
- 時間の調整: 目撃情報があるエリアの配達時間をずらすなどの配慮はありましたか?
これらを怠っていれば、安全配慮義務違反や使用者責任を問われる可能性すらあります。
従業員が安心して働ける環境を整えることは、経営者の責務です。
しかし、指揮官である経営者にとって、安全衛生は後回しになりがちなのも事実です。
「ただ居るだけの産業医」ではなく、労災リスクについて提言できる産業医選びも重要と考える今日この頃です。
もし、貴社の安全対策や産業医の運用に少しでも不安を感じられたら、お気軽にご相談ください。

