残業80時間は「危険水域」。産業医面談で企業と社員を守るフロー
「今月、残業80時間を超えた社員がいます」 人事担当者からこのような報告を受けた時、経営者としてどう動くべきでしょうか?
「繁忙期だから仕方ない」「本人が大丈夫と言っているから」で済ませてはいけません。
労働安全衛生法では、月80時間を超える時間外労働を行い、疲労の蓄積が認められる者に対して、医師による面接指導(産業医面談)が義務付けられています。
今回は、なぜ「80時間」なのか、そして産業医面談で何を行っているのかを解説します。
なぜ「80時間」なのか?(過労死ライン)
月80時間の残業は、脳・心臓疾患の発症リスクが著しく高まる「過労死ライン」とされています。 このラインを超えて放置し、万が一社員が倒れた場合、企業は「安全配慮義務違反」を問われ、多額の損害賠償を請求されるリスクがあります。
企業防衛の観点からも、この数字が出たら「赤信号」と認識する必要があります。
産業医面談で何を見るか
面談では、単に「疲れていませんか?」と聞くだけではありません。医学的な視点から、就業継続の可否を判断します。
- 疲労蓄積度チェックリスト(厚生労働省より公開あり): 自覚症状(イライラ、不眠、めまいなど)と勤務状況を数値化して評価します。
- 業務の質的負荷: 時間だけでなく、トラブル対応や厳しいノルマなどの精神的プレッシャーがないか確認します。
- 睡眠時間: 実際に身体を休める時間が確保できているか、睡眠の質は保たれているかを確認します。
企業ができる対策(事後措置)
面談後、産業医は会社に対して「意見書」を提出します。会社はこの意見を無視することはできません。
- 通常勤務: 問題なし。ただし、なるべく残業が減るように工夫すべき。
- 就業制限: 残業禁止、出張制限、配置転換など。
- 要休業: 直ちに休ませる必要がある状態。専門医への受診も必要です。
「忙しいから」は理由になりません。 社員の健康を守ることは、離職を防ぎ、結果として企業の持続的な成長を守ることにつながります。80時間超えのアラートが出たら、迷わず産業医にご相談ください。


