【産業医が解説】年末の大掃除と快適な作業環境の作り方
こんばんは。産業医の比嘉です。
今日は12月27日。年末の土曜日ということで、ご自宅や職場の大掃除を済まされた方も多いのではないでしょうか。
ちなみに私はというと……恥ずかしながら、まだ手付かずです(笑)。
そんな私が偉そうに解説するのもお恥ずかしい限りですが、これは私の「予行演習」も兼ねているということでお許しください。 今日は産業医の視点から、「大掃除のついでにできる、快適で安全な作業環境づくり」についてお話しします。
産業医が見ている「職場巡視」の視点
私は産業医として定期的に企業を訪問し、職場に安全や衛生上の問題点がないかを見て回る「職場巡視」を行っています。 一見、安全そうに見えるパソコン作業中心のオフィスやご自宅の書斎でも、プロの目で見ると「ヒヤリ」とするポイントが隠れていることがあります。
大掃除で片付けをする際、ぜひ以下のチェックリストを参考にしてみてください。
【安全面】ケガを防ぐチェックポイント
- 通路の確保: 通路に物が置かれていませんか?段差につまずいて転倒する危険はありませんか?
- 配線の整理: コード類が足に引っかからないよう整理されていますか?
- 転落・落下防止: キャビネットの上に重い物が積まれていませんか?置かれている場合、転落防止措置は取られていますか?
- 避難経路: 防火シャッターの下に物を置いていませんか?
- 薬品管理: アルコール消毒薬など、人体に影響のあるものは適切に管理されていますか?
- 衛生管理: トイレや水回りは清潔ですか?共用の冷蔵庫に飲みかけのペットボトルが放置されていませんか?
- 防災用具: 消火器は、いざというときすぐに使える状態になっていますか?
【健康面】集中力を高める環境基準
作業環境のガイドラインでは、作業の負担を減らすために具体的に以下のような基準が推奨されています。大掃除の後の配置換えで意識してみてください。下記のイラストは、厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」より引用したものです。

- 明るさ(照明): 机の上は300ルクス以上ありますか? 書類を読むのに暗すぎると眼精疲労の原因になります。
- 空気環境: 室温は18℃~28℃、湿度は40%~70%が目安です 。寒すぎたり乾燥しすぎたりしていませんか?
- 換気: こまめに窓を開けて空気の入れ換えを行っていますか?
- 姿勢(椅子): 足裏全体が床に着く高さに調整しましょう。肘掛けなども活用し、無理のない姿勢で作業できるようにします 。
- 机の下:私物でいっぱいになっていませんか?窮屈な足元は、同じ姿勢を強いられ、腰痛や肩こりのもとになります。
チェックの極意は「意地悪なシミュレーション」
これらのチェックを行う際、とっておきのコツがあります。 それは、「どうやったら目の前の作業者にケガをさせられるか?」を意地悪に想像してみることです。
- 「このケーブルがここにあれば、気を抜くとつまずくな…」
- 「この段ボールがここにあれば、避難の邪魔になるな…」
このように「逆算」して考えることで、普段は見落としていた危険箇所(ハザード)が驚くほど見えてきます。
そうはいっても、毎日働いている場所だと景色に馴染んでしまい、意識できないことも多いもの。 だからこそ、家具や荷物を大きく動かす「大掃除」は絶好のチャンスなのです。
きれいになった部屋は気持ちが良いだけでなく、実は「最も安全で効率的な仕事場」でもあります。 ぜひこの週末、産業医の視点を少しだけ取り入れて、来年に向けた「快適なコックピット」を作り上げてみてください。
それでは、皆様よいお年を(そして、私はこれから掃除を始めます…!)。

